ソルクシーズ長尾会長×エクスモーション渡辺社長「経営について語ろう」
2024年3月某日。ソルクシーズの長尾会長とエクスモーションの渡辺社長が、エクスモーションの次世代経営者育成活動の一環として会談する機会がありました。1983年にソルクシーズの前身となるトータルシステムコンサルタントを設立し、ソルクシーズの社長を17年務めた長尾会長。組込みソフトウェアの最先端技術を武器とするエクスモーションを創業から率いてきた渡辺社長。そんな2人がカジュアルに話す場をのぞけるチャンスは、なかなかありません。
「そうだね。役員歴43年だもんね」。長尾会長がトータルシステムコンサルタントを設立したのは1983年。エポックシステムと合併し、現在のソルクシーズの前身となる株式会社エポック・ティーエスシーが立ち上がったのは1998年でした。合併の舞台裏の話にうなずく渡辺社長は、「今だからこそ聞きたいことを、いくつか用意してきた」といいます。
ソルクシーズの成長プロセスから、グループ会社のビジネスモデル、新たなサービスを立ち上げる判断基準まで、話は多岐に渡りました。今回は、2人の経営者のトークセッションのなかで白熱したやりとりをレポートしつつ、渡辺社長の言葉を紹介します。
新規事業はロングタームで先を読み、継続していくことが重要
長尾会長が、ソルクシーズの代表取締役に就任した2006年は、システムインテグレーションの事業拡大が最大のミッションでした。「SEを増やしてものづくりをするだけでいいのか」と考えた長尾会長が着目したのは、ストックビジネス。今の言葉でいうと「サブスク」のビジネスモデルです。
2011年4月に立ち上がったのは、当時先進だったSaaSビジネス「Cloud Shared Office(現Fleekdrive)」。新たなビジネスモデルにチャレンジする際の考え方について、長尾会長と渡辺社長はこんな会話を交わしています。
「新たなビジネスを始めて赤字が出ると、売ったほうがいいんじゃないかといった声が挙がる。すぐに結果を求めようとする人がいるんだけど、続けずにやめたらそこで失敗になってしまう。当初は赤字が出ても、やらなきゃいけないことがある。やり続けることで初めて、成功が見えてくる。そのあたりの考え方だけで変わるよね」(長尾会長)
「新たな取り組みは、ロングタームで先をどれだけ見ることができるかが大事ですね」(渡辺社長)
当時は、セキュリティが強固で手頃な価格のファイルストレージはなかったという長尾会長。「レッドオーシャンでも、勝負できる特徴や強みがあれば挑戦する価値がある。競合と同じことしかできないなら、遅かったと諦めるしかない」。新たなサービスの立ち上げやM&Aのチャンスを成功させるために、情報収集と意思決定のスピードにはこだわっていたそうです。
「これどうですか?と話を持っていったら、すぐに明快な返事をくれる人は、またあの人に話そうと思ってもらえる」(長尾会長)
経営者に求められるのは度胸とコミット
事業立ち上げに関するジャッジから、話題は「経営者として大事なこと」へ。長尾会長も渡辺社長も「度胸がある人がうまくやる」といいます。
「いろいろ決めていくうえで、最後は自分が判断しないといけない。決断できない人も結構いるよね。決めたら責任をもって、2~3年でやめましたなどといわずに、続けていく。そのために事前の検討に時間をかけるのだから」(長尾会長)
「決断したら、コミットする。これだけお金を使います、人を集めますといい切るのが経営者の仕事」(渡辺社長)
トラブルがあったときも、トップの度量が試されます。「以前に自社のパソコンのトラブルで、お客様に迷惑をかけたときは、最大限できることを伝えて、やり切った」という渡辺社長に対して、長尾会長は、「不祥事は会社の仕組みの問題。事故は、経営者がお客様と向き合わなければならない」と返し、「リーダーをめざす社員には、そういう背中も見せたほうがいい」と続けました。
「事業立ち上げの際の売上計画やコストの試算も、携わる社員にオープンにした。事業と社員を成長させるためには、制度を作るだけでなく、我々がやっていることをしっかり伝えていくことが重要だと思う」(長尾会長)
目先の結果に左右されず、将来を見据えて事業を推進
会の終盤に、長尾会長を質問攻めにしていた渡辺社長がフォーカスしたのは、「若くして役員になり、どうやって経営スタイルを身に付けたのか」「決断に迷ったり、誰かに相談したりすることはあるのか」。話を進めていくと、2人とも「迷うことなく自ら明快に決めて、どうやって成功させるかを周囲に問うタイプ」であることが見えてきました。
共通点は、常に長期的な展望をもって事業やサービスを考えること。お客様や社員に愛をもって接すること。「かなりロングタームで事業を見てますよね。赤字の子会社を締め付けることもなく」といった渡辺社長は、長尾会長に「エクスモーションを立ち上げた頃は、かなり数字を気にしてたよね」と返され、苦笑いを浮かべています。
会談を終えた2人は、エクスモーションの次世代経営者育成メンバーとともに、食事に行ったようです。マーケットを見据えて自らの強みを明確にし、長期的な計画をもって決断を下すと、目先の結果に左右されずに着実に事業を育てていく。ソルクシーズのカルチャーは、エクスモーションにも確実に根付いています。
組込みソフトウェアのコンサルティングを主軸として、自動車業界をはじめとする大手メーカーを支えてきたエクスモーションは、日本のソフトウェア開発人材の育成に寄与するべく、オンライン学習プラットフォーム「Eureka Box(ユーリカボックス)」を次世代のサービスとしてオープン。2023年11月には、組込みソフトウェア開発の要求仕様書の作成サポートや添削を行う生成AIサービス「CoBrain(コブレイン)」をリリースしました。
渡辺社長には、ソフトウェア開発人材が不足している現状と課題、将来的なVisionが見えているのでしょう。今回の会談では、聞き役にまわることが多かった社長を、どこかで質問攻めにできればと思います。
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