渡辺社長に聞いた「エクスモーションがISIDと業務提携した理由」
2023年9月6日、エクスモーションは株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)と業務提携契約を締結しました。自動運転やEV(電気自動車)における技術革新が進んでいる自動車業界は、ソフトウェアの重要度がますます高まっています。
ハードウェアとシステムの受託開発を強みとするISIDと、組み込みソフトウェア関連の技術・ノウハウを武器とするエクスモーションが提携することで、自動車業界が抱える課題をトータルに解決するソリューションを提供できるようになるというのが今回の試みです。
業務提携の具体的な内容は、「コンサルティング~システム構築・導入サービスの提供」「ソフトウェアファーストの自動車開発をサポートする次世代型人材の育成」「自動車業界でのOTAの普及を見据えたソリューションの共同開発・提供」の3本柱です。エクスモーションは、この取り組みにどんな未来像を描いているのでしょうか。提携に至った背景と今後の展望について、渡辺博之社長に話を聞いてみました。
製造業が抱える課題を解決したいという共通の思い
「背景にあるのは、製造業におけるソフトウェアの急速な進化です。近年になって、最新技術がどんどんリリースされている状況があり、ITにおいて大きなシェアを持っているISIDさんは製造業の課題解決に注力し始めています」
「しかし彼らは、システムインテグレーションやハードウェアが主力事業で、ソフトウェアのトレンドをキャッチアップしてビジネスにつなげるのは難しい。そこでわれわれにお声がけがあったというわけです」
エクスモーションが手がけているのは、ソフトウェアの開発現場が抱える課題解決や人材育成、トータルのコンサルティング。今回の業務提携は、自社の強みを十全に発揮できる内容です。
「当初は、コンサルティングをメインに話を進めていました。エクスモーションとして、それだけでもメリットはあるのですが、製造業のシステム開発の課題解決につながるツールや、人材育成のプログラムまで広げたほうが多くの企業に対応できます。やりとりを重ねていくうちに、3つの方向で提携しようという話になりました」
ソフトウェア開発の新たなソリューションを共同開発
既にスタートしているのは、自動車業界向けのソリューションの共同開発。OTA(Over The Air)の技術をふまえたシステム開発のモデルやノウハウを構築し、企業に提案しようとしているそうです。
「IoT機器などのソフトウェアをアップデートするために必要なOTAは、自動運転を普及させていこうとする自動車業界に欠かせない技術です。ただし今は、こうするのが正解と提唱されているものはありません。われわれが取り組んでいるのは、OTAにフィットするソフトウェア開発のモデルやプロセス、ツールの構築です」
エクスモーションのノウハウとISIDのツールを連携させ、導入しやすくするのが狙いのひとつという渡辺社長。「コンサルティングだけだと、お客様がいいねと思っても、手作業で入れなければならなくなります」。ツールを提供できるようになれば、ターゲット顧客は大きく広がります。
自社の強みを活かせる業務提携を積極的に展開したい
渡辺社長に、「今回のような業務提携を積極的に展開していくのか」と聞くと、こんな答えが返ってきました。
「そうですね。自社ですべてをやろうとすると、大変な労力と時間がかかります。今回のように、われわれの強みをうまく取り入れて大きな絵が描けるのであれば、いろいろな領域でつながりたいと考えています」
特定の領域に限定するなどの制約条件を設けず、柔軟に構えたいとのこと。
「むしろ、われわれが想定していなかった企業との出会いを期待しています。テクノロジーによって、広がる可能性をしっかり捉えていきたいですね。枠を決めず、おもしろそうな話は前向きに進め、機会を見出していこうと考えています」
エクスモーションの今後について、「個人的な見解だけど」と前置きしながら、「製造業の人材不足を解決するソリューションにビジネスチャンスがあると考えている」という渡辺社長は、生成AIの進化によって業界が変わるかもしれないといいます。
ソフトウェア開発の人材不足を解決するサービスを作りたい
「製造業は今、ソフトウェア開発がかなりコア業務になっています。もの作り自体も大事ですが、ものをうまく動かさなければならないので、ソフトウェアファースト、リスキリングといったことが話題になっています」
「多くの企業で、ソフトウェアの内製化をという声があるんですが、現場としては非常に難しいんですね。ソフトウェア開発をマネジメントできる人材も、技術者も不足しているからです。今から採用をがんばろうといっても、確実にうまくいく方法があるわけではない。そんななかで生成AIは、新たなソリューションにつながる可能性を秘めています」
エクスモーションが現在、展開しているオンライン学習プラットフォーム「Eureka Box(ユーリカボックス)」は、ソフトウェア開発の現場のノウハウ上流工程から学べるナレッジ提供サービス。渡辺社長は、「参考書を買って、自分のスタイルで勉強できる人はいいけど、これだけでは足りない」といいます。
「生成AIを活用したコンテンツは、いわば必要なタイミングで家庭教師を派遣してもらえるサービス。今知りたいことを、聞けば教えてもらえます。問題は、ソフトウェア開発のノウハウはネットで検索すれば出てくるようなものではないこと。われわれの価値は、生成AIにナレッジを入れて提供できることです」
「プロフェッショナルを現場に送り込むコンサルティングと、実践的なナレッジを能動的に学習できるEureka Box(ユーリカボックス)に加えて、生成AIによる支援サービスを提供できれば、内製化を推進したい企業の人材育成に寄与できる可能性が高まると考えています」
ソフトウェア開発を手がけるすべての企業が使えるサービスを開発できれば、「日本の役に立っているといえるようになる」。近い将来、エクスモーションは、今はどこにもないサービスで製造業を変えたといわれる存在になるかもしれません。
--- ライター/Mr.Exm --
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